- 2017/01/11(水)
- こだわりの人参づくり 農業の魅力とは? ―Foodz株式会社 水登健一さん―
取材前に人参をいただきました。
すごく甘くておいしい!
こだわりを持って安全で美味しい人参を栽培しているFoodz株式会社代表の水登さんにお話を伺いました。
【茨城県つくばみらい市 Foodz株式会社 代表 水登 健一さん】
差別化の図れる人参を作り事業の核にしたかった
Q. この人参を作ってどれ位になるんですか?
約2年になります。この人参を作ろうと思ったきっかけは、最初は自分で会社を立ち上げて、野菜のインターネット通販をしたんです。以前産直のインターネットベンチャー企業にいて、販売のノウハウや差別化の重要性は学んできましたので。
茨城県は作物の南限・北限が集まる地域性や首都圏へのアクセスの良さもありましたので、そこでは茨城県の商材を扱っていこうと思っていました。そこでまず、前職で取引のあった茨城県のイチゴ農家さんから取引を始め、商材拡大に向けていろいろ情報を収集している時に人参に出会い、さらに情報を集めていくと、茨城県ではほぼ通年にわたって人参の栽培ができることが分かったんです。でもいざ商品を取り扱ってみると、自分が納得して販売できる商品がなかなか手に入らない。そこで、「納得して販売できる商品を作りたい」と思い、農業研修の門をたたいたというわけです。それが農業に携わることになったきっかけです。
抗酸化作用を高める栽培方法の研究・実践
Q. 農業をやりながら今でもネット販売もしていらっしゃいますが、他の農家さんと自分のこだわりややり方に食い違いは出ませんか?
今、扱っている商材は戦略的に差別化を図っていてこだわりのある商品です。食い違いというより、私が全て農家さんと直接やりとりをして、野菜を見て判断して販売しているので、その食い違いはあんまりありませんね。一般に流通している物より、質も価格も通常の2倍は違います。
私は人参の抗酸化作用を上げることをメインとしています。野菜は鮮度が命なので、抗酸化作用が高くないと日持ちしないんです。だから、私の人参は抗酸化作用が高くなるように栽培しています。日持ちしてとにかく甘いのが特徴ですね。「価格が良い」ので、一般のスーパーよりは、インターネットやこだわりのスーパーで販売されることが多いです。
既存のルート(近隣スーパーやJA等)で販売すると一緒くたになり、結局は価格勝負になってしまう。なので自分でアピールポイントを作って売る選択をしました。
【人参 1本1本丁寧に拭いてから出荷】
農業のリアリティをどう伝えるかポイント
Q. どうやってその特別な人参を伝えていらっしゃるのですか?
今はインターネットでPRをするのと、直接お客様に電話で伝えて説明します。
それならお客様も安心してもらえるし、一回買ってもらったらその後はほぼリピートしてもらえます。既存の流通だとアピールがやっぱり厳しいので、伝える仕組みを作ることを、今は必死に模索していますね。
直接電話で話すことで、風の音とか、トラクターの音が実際に聞こえるし、そういう点でも安心してもらえる。リアリティを伝える事ができる。畑で話すと、近くに自然や作業の風景を感じることができて、良いって言ってもらえるし、これも新しい形かなと思っています。
自分を信じてチャレンジし、明るい未来を自分でつかみ取ってほしい
Q. 新規就農をする方に必要なものは何ですか?
農業に何を求めているかによって違うと思います。
私は商業的な可能性を見出していて、どうやって差別化するかを追求しています。
新規就農者が求めるものが、将来のビジョンを持って、それに挑戦する自己実現の場なのか、自然を感じながらのスローライフを求めているのか、そういう目的で考え方は違ってくると思います。まずはその目的をしっかり見出す事ですね。
Q. 水登さんにとっての農業の面白さは何ですか?
自分で売ることは信用に繋がりますから、こだわりを実現することと、お客様にそのこだわりが伝わり信用を得られることが面白いです。その他のことも全部自分の責任だから、全部自分がやらないと始まらないので、常に前へ前へいくことしか考えてない。そこが大変ですが面白いところです!
なので、農業ははっきりお勧めします。どんな困難があっても自分で本気で考え解決できる様になりますから。
世の中の仕組みの中で生活をしていると、さほど困難な出来事もなく生きてゆける、また、問題が起きたとしても誰かのせいにして、自分で原因や対策を考え問題を解決しなくても生きていける。そうすると、真剣に考えることをしなくなると思うんですよね。でも、私の周りの就農者は問題に当たると真剣に考え、もがき、最終的には解決してしまう。いやー、「人」って本気になるとすごいなと改めて感心してしまいますよね。人の可能性はすごい。だからどんどんチャレンジしてもらいたい。
でも、そこにはある程度の戦略やビジョンが必要だと思います。今までと同じやり方で既存のルートに乗せてしまうと、「作業がつらく」「価格も安く」誰もやりたがらない農業を始めることになってしまい、序列の一番下で価格を叩かれて終わってしまう。それに耐えられなくなり農業を辞めてしまう人も何人も見てきました。
でも、担い手不足の状況を考えると、しっかりとした事業戦略や少しの忍耐があれば、大いに将来が開けると考えていますけどね。
【人参畑 収穫まで草の管理が大変】
Q. 水登さんはこれから先どのようにお考えなのですか?
将来的に加工を目指していて、2.3種類の野菜を軸にして加工製品を出していきたいです。今は有機農業をしていますが、有機の理由は「差別化」にあります。その前に、自分自身も極力農薬を吸い込みたくないですしね。体が資本ですから。
自分にも地球にもお客様のためにも有機という選択をしました。だから、もっと品質を上げて加工して、そのまま高品質な野菜をお客様に届ける事を持続することが、次世代にも伝えていくことだと思っています。
【ふかふかで良質な土】
Q. 一日のスケジュールを教えて下さい
週一で家族サービスをしていて、その他は仕事していますね。一日の流れは、朝起きて、まず受注の確認をして、次に発送の段取りをする。それが終わったら畑に出ていろいろと作業をして、夕方に野菜の梱包、発送という流れです。
夜はインターネット関連の仕事で広告の見直しをしたり、受注確認をしています。
とにかくお客様と話して実際に食べてもらって、この人参を広めることを常にしていますよ。
【取材を終えて】
常にお客様の事を考えて安心安全を意識している水登さん。
その伝え方は従来の販売方法でなく、ネットにしぼって、直接お客様と信頼を深めていく方法をとっている。実際に食べさせていただいた人参は本当に甘くて、今までで食べた人参のイメージが変わる程でした。この人参の他にもいろいろな野菜を、水登ブランドとしてどんどん食べてみたいと感じました。
―記事執筆者―
高橋直也氏
1984年10月18日生まれ 青森県出身
青森大学卒業後、はるやま商事で販売業を学び上京、一年後、夢であったライター業に移行する。
作家の元で3年間修行。その中で長野県の川上村のレタスを紹介してもらい、
その美味しさに惹かれて農業の世界に飛び込む。
現在は、農業現場の現場と野菜伝えるべく、全国の農家を手伝いながら訪問している。
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